デジタル時代のマーケティング
ECサイト、DXが進むデジタル時代において、大量のテキストデータ(非IoTデータ)の解析により行われるデジタルマーケティングが重要となる。
自然言語処理とは、我々人間が日常的に使っている「自然言語」をコンピュータに処理させる一連の技術。(形態素解析・構文解析・文書の分類・機械翻訳・チャットボットなど)
大量のテキストデータをAIが解析する自然言語処理(NLP)はマーケティング精度を向上させる。
自然言語処理が注目される背景
- テキストデータの増加
全世界で発生するデータの量は、2025年には163ゼッタバイト(163兆ギガバイト)に達する。(、IDC Japanの予測)
増加するデータのほとんどは、人間が作り出すテキストデータを中心とする非IoTデータである。 - 汎用言語モデルの進化
汎用言語モデル「GPT-2」がさらに進化した「GPT-3」が発表され、あたかも人間が書いたような文章を自動で生成することが可能になる。(提案書やマニュアル、企画書を自動生成など)
- 日本企業の汎用言語モデル技術への参入
英語圏での自然言語処理技術の発展の流れに、日本国内の企業も合流し、日本語圏での自然言語処理技術が大きく発展する。
消費者の心理や行動原理を解析しマーケティングの意思決定を支援
人の作業に依存したマーケティングは、すでに限界に達している。ビジネスの持続的な成長には、データに基づくマーケティングが欠かせない。
限られた人員体制でこれを実現するためには、インテリジェントな自動化ツールやAIテクノロジーが欠かせない。インターネット空間には、さまざまな粒度のテキスト情報や音声情報があふれており、マーケティング戦略を立案する上での重要な情報となる。自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)は人間が書く言葉や話す言葉に潜在する意味をAIで解析し、言葉だけからは見えにくい消費者の心理や行動原理を明らかにする。
刻々と変化する市場、マーケティング環境の中で「いつ」「誰に向けて」「何を」提案すべかを定量的に把握し、マーケティングの意思決定を支援するNLPの代表的な活用例は以下の内容となる。
- 観客に共通する関心事、トピックの抽出
観客に共通する関心事やトピックの抽出は、NLPが大きな効果を発揮する領域。たとえば、SNSやECサイトで観客がどんな意見を発信しているかを分析することで、共通の関心事を特定し、ターゲットとなる観客に向けた最適な提案に生かす。 また、競合する製品やサービスに対する観客の評価は、企業が情報を公開していない限りなかなか入手しにくいのが、NLPによってさまざまな口コミ情報があふれるSNSから観客の評価・マーケティング価値を引き出す。
- SEO対策のためのキーワード検出
SEO対策のためのキーワード検出では、インターネット上の膨大なテキストデータや、既存顧客とのやりとりで発生するテキストデータから関心の高いキーワードを明らかにできる。自社のSEOキーワードと照合することで、新たな施策の立案や改善に利用できる。
- センチメント分析から短時間で高度なインサイトを獲得
センチメント分析は、サーベイを通じて消費者がある質問に対してポジティブな感情を持っているか、それともネガティブな感情を持っているかを明らかにするマーケティング手法。 マーケティング担当者は、センチメント分析により多くのインサイト(消費者の無意識的に影響を与える購買要因)を獲得することができるが、自由回答のアンケート集計、分析には多くの時間を要する。また、自由回答で用いられる言葉の表現や粒度は、回答者によってまちまちであることに加えて、分析も担当者の主観的な判断に依存しやすい傾向がある。 NLPの活用により、明確な判断基準に基づく精度の高いインサイトを短時間で獲得できる。
- チャットボットのデータ分析によって、リードの質を向上
チャットボットは、人手を介さずに見込み客、あるいは既存顧客とコミュニケーションをするための手段。テキスト情報をNLPで解析することで、質問の優先順位や見込み客の質(リードの質)を明らかにする。チャットボットに寄せられる問い合わせは、Eメールからの問い合わせよりも緊急度が高いことが多い。その傾向が明らかになることは、顧客満足度につながる多くの回答パターンの準備や、製品の改善点の特定にもつながる。その解析結果には高い価値がある。
- 音声検索の解析も可能にする高度な文脈理解
Siri、Alexaなど急速に普及しつつあるリスニングデバイス、音声検索システムにも応用されている。NLPは今後、単語によるインターネット検索よりもさらに高度な、話し言葉の文脈理解にも対応した進化を遂げながら、マーケティングの領域にますます大きな成果をもたらす。 多くのコミュニケーションは社内SNSなどのプラットフォーム上で行われるようになり、膨大なテキストデータが蓄積される。 蓄積されたデータを解析することで、かつてない業務変革を推進することが可能になる。NLPはマーケティング領域にとどまらず、あらゆるビジネス領域にイノベーションをもたらす、未来のテクノロジーである。